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本号の特集は「食道癌手術のコツと要点」である.従来,食道切除はもっとも侵襲の大きな手術であり,外科医が受けたくない手術の代表であった.しかしながら,本号を一読していただければ,栄養管理の進歩,チーム医療の導入,低侵襲手術の発展により,安全に行えるようになり,ハードルは間違いなく下がっていることがおわかりいただけるものと思う.若手にも,ぜひ「コツと要点」を会得してもらいたい.
最近の食道癌に関する数字をいくつか紹介したい.厚生労働省人口動態統計によれば,食道癌で命を落としている方は,平成25年11,543人,平成26年11,576人,平成27年11,734人とほぼ横ばいである.対人口10万人あたりの死亡率も2010年以降,9.2〜9.4で一定であり,喫煙率が下がっていると思われるが,食道癌が減少しているわけではないことがわかる.食道癌になった方々が実際にどのような初回治療を受けているか,全国を網羅した正しい資料は残念ながら存在しない.日本食道学会の全国登録による報告書(Comprehensive Registry of Esophageal Cancer in Japan, 2009)によれば,登録された全6,260例中,初回治療として手術を受けた方は3,943例(63%)であった.また,National Clinical Databaseによるデータでは,2011年の食道切除術件数は5,354例であった.食道学会癌登録の施設数は276,一方NCDの施設数は713である.どのように解釈するかは難しいが,罹患数が死亡数より多いことは間違いないので,本来食道癌手術件数はもっと多くてよいものと考える.適切な治療を受けていただくためにも,われわれ外科医が食道癌治療に対する知識をより深いものにすることが大切であり,それをきちんと患者さんに伝える責務があるものと考える.ちなみに,NCDデータによると消化器外科領域代表8術式のなかで,施行している施設数は食道切除がもっとも少ないことが明らかになっており(胃切除は1,737施設),集約化が進んでいるものと考える.なお一層,食道癌を担当する外科医は腕を磨きたいものである.
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