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今月は栄養療法に関する特集である.「栄養」は古くて新しい問題である.古くは,小生が専門としている食道領域における中山恒明先生の偉大なる輝かしい業績がある.それまで30~50%あった食道癌手術死亡率が,世界で初めて1960年代に10%を下回ったのである.それは過大な侵襲である食道癌手術を3期に分けることで達成できた.1期目は胃瘻をおいたのである.2期目に栄養状態の改善を待って開胸手術にて食道癌を切除した.3期目に再発がないことを確認して再建した.その歴史を知ったときの驚きを小生は今も忘れない.なんと素晴らしい着想であったことか.その後,IVHが導入され(小生が医者になったときはそう呼ばれていた.TPNとの違いは本編小山先生の論文を参照あれ),食道癌手術死亡率はついに数%の時代になった.麻酔の進歩,手術手技の改良も大きな要素であるが,やはり何といっても栄養療法の進歩の寄与が大である.一昔前は,どの外科学教室にも代謝栄養を専門とするグループがいたものである.臓器専門性が問われる時代になり,少々減ったような感じもしていたが,本編を拝読すると,なかなかどうして健在である.しかも,栄養療法の進歩がひしひしと伝わってくる.小生が医者になりたての頃は(昔話ばかりで恐縮です),IVH製剤を自分たちで調合していたものである.今や,TPN製剤はキット化され,EN製剤も様々な病態に合わせて使用すべきことが詳しく記述されている.ただし,小山先生の「少なくとも自分で指示を出したキット製剤に,どのくらいの糖やアミノ酸が含まれているかを全く考慮せずに使用することがあってはならない」ということも重要である.外科医にとって大切な周術期の栄養療法も詳しく述べられている.栄養を決してあなどってはならない.グレリンの臨床応用も始まっている.最新の栄養療法を知ることができる素晴らしい特集であることを確信している.ぜひ,若い外科医も一読あれ.
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