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あとがき
瀬戸 泰之
pp.1028
発行日 2023年8月20日
Published Date 2023/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214223
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わが国の保険診療においてロボット手術が認められたのは2012年であった(前立腺悪性腫瘍手術).外科領域に導入されたのは2018年であったので,まだ5年ほどしか経っていない.にもかかわらず,現在の普及程度やユーザーである外科医の関心は当初の予想を上回るものであると思う.コロナ禍にあっても,わが国のロボット手術件数は右肩上がりで増加している(世界では2020年,初めて増加の歩みが止まった).今後複数機種の参入,価格の適正化に伴い普及の加速度も増していき,数年後には普通の手術になっているのではないだろうか.外科治療において不可欠の手術支援機器になることも間違いない.
ロボットの特徴として,膨大なデータが容易に保存,蓄積できることが挙げられる.例えば,術中の術者の動き(アームの動かし方など)やカメラワークなどがAI機能のもと評価される日がそう遠くないのではないか.さらに,適切なアプローチ,適切なデバイス選択などがsuggestion(指示)されることも可能になると思われる.より安全,より適切な手術遂行のための有力な手段となるであろう.もちろん,その意義を否定するものではない.一方で,このまま進むと,人間が本来持っているはずの切磋琢磨,向上心が無用になるのではとの懸念も生じる.本来,外科手術は術者の経験に基づいて適切な判断が下され,術者の外科医としての能力向上がより良い手術を行う礎になっていたはずである.
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