特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
視床下部腫瘍
景山 直樹
1
,
和賀 志郎
1
1京都大学医学部外科第一講座
pp.777-782
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202946
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視床下部腫瘍とPubertas praecox
種々の頭蓋内疾患のさいにPubertas praecoxを伴うことはよく知られているが,その中でも特に松果体腫瘍にしばしば起ると言われている.1896年Gutzeitが松果体奇型腫を持つた7歳の男児に著明なPubertas praecoxを認めて以来,この症状は松果体腫瘍の特徴の一つとして重視されるようになった.そして1908年Marburgはそれ迄の類似報告例を集め,それらの例で皆松果体が破壊されていたことから,「松果体は個体が成熟期に達するまで,その性成熟を抑制する物質を出すのであろう」との説を提唱した.以来松果体は内分泌腺の一つと考えられるようになり,その裏付けとして,多くの松果体剔出実験や,松果体移植またはその抽出物の投与実験等が行われたが,その結果はまちまちで,現在では大方の趨勢が上述のMarburg説を否定する方向に向つている.これを否定する理由の一つとして挙げられるものの一つが,Pubertas praecoxを伴う間脳疾患の存在である.すなわち視床下部のみの病変で,松果体になんら変化を認めなくても,Pubertas praecoxを伴つている例が,1940年頃以後いろいうと報告されてきたのである.
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