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はじめに
視床下部と摂食調節との関連は,臨床的知見をとおして古くから示唆されてきた。たとえば,Fröhlich症候群の患者にみられる極端な肥満症が視床下部の障害によることや,下垂体腫瘍患者にみられる視床下部性の肥満は古くから注目されていた。しかし,その関連が実験的に確立されるようになったのは,脳定位固定装置の導入後の脳局所部位の破壊や刺激実験による。
1940年,HetheringtonとRanson18)は,視床下部腹内側核(VMH)だけを電気的に破壊すると,過食と肥満が起こることをはじめて報告した。それから約10年後,VMH外側の視床下部外側野(LHA)を破壊すると,無食症が起こることも明らかになった2)。一方,破壊実験とは逆に,VMHを電気的に刺激すると,摂食中の動物であっても摂食行動が停止することや,LHAを電気的に刺激すると,満腹状態の動物であっても摂食行動が誘発されることが報告された10,32)。これらの実験結果からAnandは,LHAとVMHがそれぞれ摂食を促進および抑制する中枢であるとして,前者を摂食中枢(feeding center),後者を満腹中枢(satiety center)と呼んだ。しかし,LHAおよびVMHと摂食調節との関連が注目されたのは,このような破壊および刺激実験の結果だけによるのではない。
The regulation of food intake is a complex process. Appropriate regulation of food intake utilizes, a variety of signals that are generated by deviation of the energy and nutrient levels from the homeostatic state of the organism, sensory signals transmitted from the visual, olfactory and gustatory systems in response to food, neural and hormonal signals from visceral organs including the gastrointestinal tract, light-dark signals that entrain circadian feeding rhythm, and others. Psychological, ecological and sociological factors also affect food intake.
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