特集 神経学における最近の研究
<生理>
視床下部—その行動発現
大村 裕
1
1九州大学医学部生理学教室
pp.677-679
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904890
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視床下部の機能は動物の行動として明らかに表出される。麻酔下でも体液性変化として現われる場合が多い。したがって視床下部内の特定部位の破壊とか電気的あるいは化学的刺激と,それによって起こる行動や体液の変化,すなわち比較的単純で明瞭な入出力関係が従来過重視されてきた。そのため暗箱内の神経生理学的機構の解明は二の次の状態であった。しかし,この十数年間,神経生理学的方法の発展,組織学的方法の開発など急速な進歩によって,視床下部の機能の本態は次第に明らかになってきた。こうして破壊や刺激によって視床下部内に発見されていた各種の古典的な中枢という概念は大きく変化してきた。視床下部性行動が起こるためには動機づけが必要である。この動機づけから行動表出という一連の現象は,これら中枢を中心として辺縁系および前頭野を含めた神経回路の統合機能によるものであると考えなければならなくなってきているのである。
最近のこのような概念の推移は,神経生理学的には大きくみて次の3要因に基礎をおいているようである。
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