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あとがき
瀬戸 泰之
pp.1092
発行日 2012年8月20日
Published Date 2012/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104202
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本号は外科系雑誌での放射線療法に関する特集である.一読して,まず外科医が「知っておきたい」ことは,強度変調放射線治療(IMRT)に代表されるような,その技術進歩である.患部のみ照射されるのが理想的であるが,体外照射では,病巣と照射装置とを結んだ直線上に存在する臓器がある程度被曝することはやむを得ないこととされてきた.筆者が専門とする食道癌においては,その解剖学的特徴から,周囲臓器すなわち肺や心臓,脊椎などの生命維持に必要不可欠な重要臓器も被曝することになる.その影響を極力抑えるため,照射角度を変えて行われてきたが,それでも放射線肺臓炎や心囊水貯留などの晩期毒性の頻度は少なくなかった.ゆえに,筆者は切除できる病巣に対しての術前放射線療法には否定的であった.もちろん,切除できない病巣あるいは,局所再発などに対して放射線が有効であることは十分認識している.照射技術の目を見張るような進歩により,幸いなことにそのような心配,不安が杞憂になりつつあることを本特集は伝えてくれている.
また,外科医が「知っておくべき」放射線治療の適応・役割,外科治療との棲み分けまで簡潔に述べられている.要するに,科単独ではなく,科の垣根を越えたチーム医療,集学的治療こそが最も強力な癌に対する根治治療なのである.いつ手術を行うか,どの時点で放射線を行うか,緊密な連絡,チームワークが肝要であることは言うまでもない.タイミングは重要である.適切な時期を逸すれば,癌は容赦なく,躊躇せず患者さんの命を奪っていく.的確な集学的治療を行いうる施設こそが癌専門病院と呼ばれるのではないだろうか.
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