元外科医,スーダン奮闘記・23
生と死
川原 尚行
1
Naoyuki KAWAHARA
1
1NPO法人ロシナンテス
pp.385-387
発行日 2008年3月20日
Published Date 2008/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102067
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
医療システム
どこの国や地域においても医療システム作りは重要な課題である.単にNGOの負担やシステムで診療所を運営していくことは簡単である.災害,あるいは戦災による難民キャンプでの緊急医療支援の場では,もちろん上記のシステムが適応されるであろう.しかし,それら以外の場では当地の文化や習慣に沿った医療システム作りが必要であると思う.
まずは診療費である.私が立ち上げた診療所では,以前は完全に無料の体制で行っていたが,これは患者が殺到し,重症でない人までわれ先にと診療所に駆けつけ,重症の人が後回しにされたりといったことが続発した.また,住民のモラルハザードを招くことも感じられた.無料であることによる罪の部分を考慮しなければならない.そこで,現在は有料診療体系にしている.これが,なかなか大変な作業である.もちろん,本当にお金がない患者に診療が必要な場合には無料診療をすることにしているが,村人がお金がない振りをするなどといったことが起こり出した.これには,なぜ診療所で有料診療を行うのか,ということを住民に対して何度となく説明し,ほぼ有料化を理解してくれるようになった.ただし,一般的に外国人であるわれわれの診療には無料が当たり前とする風潮がある.私達はそれを一新するのに時間を要した.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.