セミナールーム・法医学
生と死の間(その3)/安楽死(その1)
江下 博彦
pp.60-61
発行日 1969年7月1日
Published Date 1969/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914535
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脳死説について
人間の人生ドラマの終焉が死であるとすれば,その最後の幕を下す役目を負っている医師が,今まで「死の判定」についてきわめて慣習的かつ古典的基準にたよっていたことは,思えば迂闊なことであり,さらに奇怪なことに法的にも死の判定の基準を示した法律はなく,これを論じた判例もないことは,今回のシンポジウムで金沢教授も指摘されており,現在の医学は肝心の「死」の定義を欠いているといわれている所以です。
旧来の慣習的概念からすれば,臨床的には「血液循環と呼吸の非可逆的停止」が確認されればそれで十分と思われます。ここでは「非可逆的」ということが絶対条件であります。すなわち仮死(可逆的)と真死(非可逆的)とを誤まらないよう慎重を期すべきです。そのためには死の徴候を知るいろいろの方法が考えられていますが,法医学的な一般的死の確徴としては,心臓および呼吸停止のほかに,意識の完全な消失,体温の冷却と皮膚の蒼白化,各部反射の消失,筋肉の弛緩などがあげられます。
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