バイオエシックス・セミナー・3
赤ちゃんの生と死をめぐって
木村 利人
1
1ジョージタウン大学ケネディ研究所アジア・バイオエシックス研究部
pp.341-344
発行日 1984年3月1日
Published Date 1984/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661920732
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今まで述べてきたところから明らかなように,‘バイオエシックス’は,伝統的な‘医の倫理’とは,その発想や問題へのアプローチが異なります.
今月のテーマである重度の遺伝欠陥や重症の奇形をもって生まれてきた赤ちゃんの生と死をめぐっての極めて困難な決断の問題も,従来から行われてきたように医療従事者の医療処置上の判断が優先し,多くの場合,当事者としての両親や家族に詳細な病状などや治療の選択のオプションについての情報が告げられないまま決定が行われてはならないとするのです.こういった場合,母親はもちろん父親・家族・親族,更に一般の社会の人たちによる社会的・経済的・倫理的・道徳的方向づけや,それらに基づいた‘公共政策’の枠組みに照らして慎重に,医療の立場からの意思決定が行われなければならないとするのがバイオエシックスの基本の視座から出てくる考えなのです.
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