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2006年6月に成立した「がん対策基本法」によって,がん対策においてはより一層の充実を図ることが示され,様々な事業が推進されているが,「腫瘍専門医」の養成も急ピッチで展開されている.この腫瘍専門医の数的,質的向上に対する関連学会および行政などの精力的貢献には目を見張るものがあるが,一方,現状に目を移すと腫瘍内科医が比較的広く確立している欧米と異なり,日本における固形癌に対する化学療法は,その善し悪しは別として,かなりの部分を外科医が担っていることもまた現実である.また,以前の気休め的な化学療法の時代を脱し,有効性の高い薬剤の開発が進むなか,多くの外科化学療法医はその膨大な情報量と急速な進歩にとまどいを隠せないことも多い.DPCの導入とともに急速に広がった外来における化学療法は,チーム医療という医療の形態を基盤に進化し続けている.
しかし考えてみると,手術室で仕事をするとき,決まった手順に沿った「手術の流れ」や,麻酔医,介助看護師,ME,事務などとの協力関係の善し悪しが成功の鍵を握っていることは多くの外科医の実感であろう.そして,そのようなチーム内において互いを尊重,理解し,またそれぞれの知識,技術,そして意欲を高める努力が多くの現場で展開されている.つまり,チームで行う医療の重要性を一番理解しているのも外科医と言っても過言ではないのではないだろうか.言い換えれば,決まった手順に沿った医療やチーム医療の重要性,有効性を最も理解し応用できるのも麻酔医を含めた外科系医師なのかもしれない.「腫瘍内科医」に多くのご助力,ご教示をいただきながら,チーム内の密な連携のもと,がん化学療法における外科医の果たすべき役割はさらに大きくなっているものと思われる.外科医が主たる読者である「臨床外科」で「外来がん化学療法」を特集として取り上げる意味はまさにそこにあるのではないかと考えている.本特集が,化学療法を実践している多くの外科医に新たな展開をもたらすことを期待してやまない.
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