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あとがき
桑野 博行
pp.1302
発行日 2007年9月20日
Published Date 2007/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101842
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臨床実習で外科をローテートしてくる学生と質疑応答など行う際にしばしば感じることであるが,ドイツ語による臓器名はMagenをはじめとするごく一般的であるもの以外は,これらを知る者はほとんどいないということである.もちろん筆者もドイツ語に長けている筈もなく高邁なことを述べる資格もないが,何か物足りなさを感じることも事実である.医学教育のなかでは当然,医学知識,倫理観,コミニュケーション・スキル,さらには医療技術といった医師となるにあたって必要欠くべからざる分野の充実がはかられ,それぞれの内容の質とともに学ぶべき量も増大していることは確かである.今後もさらに医学教育の現場では社会的ニーズにも対応すべく,その充実を求めなければならない.また,これらの評価の多くはそれぞれ何らかのかたちで数値化がなされているが,その結果として医学にとどまらず多くの分野で数値目標の達成にのみ全力を傾注する傾向が顕著となってきているように思われてならない.
前述したドイツ語に限らず,文学や哲学をはじめとした医療の実務には必ずしも直接かかわらないような分野における,いわゆる数値化で評価されないuncountableな一般的教養が今こそ問われているようにも思われる.単なる実務的,実用主義的側面にのみ片寄ることなくこのような教養も重要視することがひいては医師の責任感,社会性,存在感,そして誇りにつながっていくのではないだろうか.医療人としての知識,技術そして倫理観に加え,人間としての幅と教養がよりよき医師の育成の両輪と考える.私自身もいまだ未熟ではあるが,さらに精進していきたい.
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