Japanese
English
神経疾患アトラス8
Lesch-Nyhan症候群
The Lesch-Nyhan Syndrome
水野 悌一
1
,
鬼沢 仁一
2
Teiichi Mizuno
1
,
Jinichi Onisawa
2
1お茶の水女子大学保健管理センター
2東京大学小児科
1Health Service Center, Ochanomizu University
2Department of Pediatrics, University of Tokyo
pp.1541-1545
発行日 1973年12月1日
Published Date 1973/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203421
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Lesch-Nyhan症候群は,1964年Lesch及びNyhanが高尿酸血症と特有な臨床症状を有する小児の同胞例を発見し,尿酸生成経路において14C-glycineから尿酸への転化が正常児の200倍も速いことを証明した。次いでSeegmillerはプリン代謝経路でヒポキサンチンからイノシン酸,およびグアニンからグアニル酸への再利用路で作用する酵素—hypoxanthine-guanine phosphori—bosyltransferase (HGPRT)—の活性欠如を認め,以後一般にLesch-Nyhan症候群と呼ばれている。現在わが国では,著者らの6例(第1,2表)を含め約20例が,また外国では,Nyhanらの25例を含め約100例はあると考えられる。
本症候群の特徴は①伴性劣性遺伝で男児に発症。②乳児期より反覆する嘔吐,腹痛,不機嫌。③心身発達が遅れ,choreoathetoid運動や時に錐体路症状も認められほとんど脳性麻痺と誤診(第1図)。④血中,尿中の尿酸量の増加とそれによる腎機能障害,血尿,尿路結石,時に痛風結節や痛風発作、尿中のオレンジ色の尿酸塩や無色の尿酸結晶。⑤自傷行為(第2〜4図)。大多数の症例で1歳以後になって自身の手指,下口唇,舌,上腕などを噛むが知覚脱失はない。⑥知能障害は比較的軽く,情緒障害もないが,時に攻撃的性格。⑦HGPRTの活性欠損が赤血球や皮膚線維芽細胞などで確認され羊水診断も可能となつた。
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