Japanese
English
特集 精神科診断分類の背景にある考え方
KahlbaumとKraepelin—二人の疾患単位探求者
Kahlbaum and Kraepelin:Two psychatrists in pursuit of disease unit theory
渡辺 哲夫
1
Tetsuo Watanabe
1
1南嶺会勝連病院
1Katsuren Hospital, Okinawa, Japan
キーワード:
単一精神病論
,
unitary(single/homogeneous)psychosis theory
,
疾患単位論
,
disease unit theory
,
精神医学的症候群
,
psychiatric syndrome
,
心的スペクトラム障害
,
spectrum of mental disorders
Keyword:
単一精神病論
,
unitary(single/homogeneous)psychosis theory
,
疾患単位論
,
disease unit theory
,
精神医学的症候群
,
psychiatric syndrome
,
心的スペクトラム障害
,
spectrum of mental disorders
pp.805-811
発行日 2020年6月15日
Published Date 2020/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206117
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抄録 精神医学が自身の領域内で疾患単位を確立するのは,永遠に到達できない目標を追求することであり,「疾患単位の概念」はKantが言った意味での「理念」だとJaspersは指摘した。だが,KahlbaumとKraepelinの疾患単位追求の努力は不毛な幻影を追っただけではなかった。「破瓜病,緊張病,循環病,類破瓜病,…」などの発見と命名は精神医学の進歩の原動力となった。しかし,古来の単一精神病論になお親和的であったKahlbaumと遥かに強く疾患単位論に親和的であったKraepelinの差異は無視できない。二人の巨人の創造性によって賦活された精神医学は,この基本的な2つの論(二つの理念追求)のあいだで振り子運動を続ける「症状群論」の孜々とした歩みとなった。とりわけ,多様な症状群が経過の中で層次構造を構成しつつ展開するという思索は多くの第一級の臨床家によって反復されてきた。Kraepelin自身も晩年にはここに歩みを進めた。そして近年の精神薬理学の傾向やスペクトラム概念重視の傾向は,疾患単位論が,症状群論を介して単一精神病論へと回帰してゆく歩みの最中にあることを教示している。
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