特集 精神科診断分類の背景にある考え方
特集にあたって
内山 真
1,2
1東京足立病院
2日本大学医学部精神医学系
pp.803
発行日 2020年6月15日
Published Date 2020/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206116
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精神医学においては,20世紀初頭から疾患概念や診断基準が長年にわたって整理され,他の臨床医学分野と同様な医学モデルに倣った体系が作られてきました。こうした伝統的な診断や操作的診断基準に基づいて,私たちは精神医療,学生や研修医の教育,他分野への啓発を行っています。しかし,個別的な症例を扱う実臨床における貢献という点からみると,疾患経過という時間軸で変化する症候の縦断的多様性や,個人の生物学的あるいは心理社会的特性からくる症候の横断的多様性が十分に反映されていないと感じられることが多くあります。そして,こうした点を補う知識や経験を積むことが精神科専門医として必要不可欠な素養とみなされています。
日々の臨床では,明確な疾患カテゴリーのみに基づいて実臨床の現場における治療や介入の判断が行われているわけではありません。一人の人間として患者をとらえ,個人の背景要因を踏まえて心理社会的な接近戦略を探り,存在する症状をきめ細かに探って適切な薬物選択行い,治療方針を立てることが要求されます。実際に,ある種の行動療法や薬剤では,診断横断的な使われ方をすることが増えており,各疾患カテゴリーを超えた治療法が選択される機会も多いかと思います。
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