古典紹介
—E. Kraepelin—Vergleichende Psychiatrie
宇野 昌人
1
,
荻野 恒一
1
Masato Uno
1
,
Koichi Ogino
1
1東京都精神医学総合研究所
1Psychiatric Research Institute of Tokyo
pp.1458-1462
発行日 1975年12月25日
Published Date 1975/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202424
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様々の人間集団における精神障害の比較考察,つまり,一般には性別,年齢別,職種別などで行われているが,これは,基本的には,2つの方面において,精神医学の問題解明に寄与し得る。すなわち,その1つは,精神障害の原因に関する知見への寄与であり,もう1つの寄与は,疾病現象の独特な形成において,病者の人格に由来する影響を検討できるということである。従来の比較精神医学研究は,ほとんどすべて,同一民族内での集団に限られており,フランス人,英国人,イタリア人の精神病罹患率が,我々のものと遠うかどうか,違うとすれば,どんな点においてかといったことに関しては,全くわかっていない。もちろん信頼できる比較は,たんなる状態像ではなく,真の疾病分類ができて初めて可能となるのであるが,臨床的見解に相違があるため,この比較は,さしあたり同一観察者によってしか行うことができないのである。それゆえ,これまで行われた外国諸民族の精神疾患に関する報告のうち,利用できるものはごくわずかしかないが,そこに予想される差異の大きさそのものが,それ自体,特に意味をもち,信頼できるものである場合もあるであろう。
そこで私は,ジャワのボイテンゾルク精神病院において,みずからこのような研究を行うことにした。その病院で,私は,院長ホフマン博士から御好意あふれる便宜を与えられたばかりか,目的達成のため,あらゆる面で好条件に恵まれたのである。そうして,大きな事象そのもののもつ困難にもかかわらず,次のことを明らかにすることができた。つまり,それは,先に触れたような仕方で成果を挙げ得るということ,またそれがどういう面においてであるかということである。
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