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編集後記
S. I.
pp.194
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205124
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人口減少社会を迎え,出生や成育に関わる医療的支援がますます重要になってきている。そして母子の身体的・精神的なリスクを管理しながらこの時期を乗りきることは,今や医療の中でも最重要の課題の一つである。本号の特集「妊娠・出産・育児とメンタルヘルスケア」は,現在の医療・保健・福祉が抱える問題点や対策が詳しく紹介されている。この時期に陥りやすい精神保健的問題や精神疾患の理解,妊娠から育児までの各段階における支援のあり方,産科医療と精神科医療の連携,プライマリーレベルでの支援体制のあり方,望ましい保険診療の体制など各論が詳しく論じられ,この問題の持つ重要性をあらためて認識させられた。先進工業国では妊娠期から子どもの成長にかけての健康を育てていくことを最重要課題の一つとしており,精神医療もその重要な一環となっていることがあらためて教えられた。
今月の原著論文は2編である。中村敏範先生は北アルプス医療センターにおけるアルコール依存症の社会復帰プログラムを研究された。そこでの活動には地域性があり,薬物依存の併存が少なく,治療成績が良い。しかし一方で老年期の患者が多く認知症併存などのためにプログラムに乗りにくい問題点もある。高齢者のアルコール依存症に対しては今後ますます難しい対応を迫られることをあらためて教えられた。清水秀明先生は鏡現象を呈した大脳基底核症候群の1例を提示し鏡現象の発生機構について考察された。視空間認知や自己認知の障害されるこの現象が不安・抑うつといった感情の影響を受けると考察され説得力がある。症例研究の大切さが教えられる報告であった。
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