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編集後記
S. I.
pp.414
発行日 2011年4月15日
Published Date 2011/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101861
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厚生労働省は「患者調査」をベースに数年ごとに患者数の推計を発表している。精神疾患では気分(感情)障害が1999(平成11)年以降非常な勢いで増え続け,2008(平成20)年には105万人に達した。約80万人の統合失調症などを抜いて第1位で,今や国民的病気である。本誌「シンポジウム:気分障害の生物学的研究の最新動向」では,さまざまな角度からこの気分障害をめぐる議論がなされている。
増え続ける気分障害,特に最近の非定型な病像を示すうつ病については,その診断的位置づけや適切な治療方法についてまだまだ定まっていないようである。そもそも疾患の診断にあたっては,臨床単位が同定でき,病因が判明あるいは示唆され,臨床経過と転帰が予測でき,適切な治療と管理がわかっていることが理想とされるが,気分障害については,基礎研究の進歩や治療方法の拡大とともに,ますます議論が盛んになっている。本誌の「シンポジウム」では,病因・病態,診断,検査などについて最新の情報を提供していただいている。また,近年なぜうつ病診断が増えたのか,診断基準の問題か,新たな治療法の導入の影響か,社会文化的影響はどうかといったことも幅広く論じていただいている。米国精神医学会によるDSM改定を控え,気分障害の診療のベースにある考え方をまとめていくうえで絶好の内容であった。執筆の労を取られた先生方に感謝したい。
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