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編集後記
S. I.
pp.916
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200022
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欧米で脱施設化の運動がはじまり,入院治療から地域での治療へとシフトするようになって早くも半世紀が経つ。当初脱施設化,脱病院化は社会思想の影響を受けた様相があったが,次第に医学としてのエビデンスが集まり,いまや地域精神医療は精神科医療の主流になっている。わが国でも精神科病床数はここ十数年徐々に減少しているが,人口減のために人口当たり病床数はほとんど変化なく,いまだ入院中心の医療であることが内外から批判されている。昨年「精神障害者の地域生活への移行を促進するために」精神保健福祉法が改正された。いくつかの重要な改正に加えて今後の医療を展望するための指針作成がうたわれ検討会が設けられた。今月号の特集「良質かつ適切な医療の提供—改正精神保健福祉法41条の具体化」では,検討会での議論やそれぞれの立場での見解などを識者に執筆いただいている。
諸論文を通読して,重要な問題が深く議論されていると思われた。特に病床の機能分化,重度慢性患者の扱い,病床転換構想など今後の医療の基本を決定するような諸問題が多方面から検討されており興味深かった。もちろん結論の出ていないところもあるが,かえっていろいろと考えることができる利点があった。脱施設化という歴史的事態を迎えて久しくなるが,漸進的な改革がわが国の特徴であろう。地域中心の医療やケアがいつ本格化するのかと気がもめることもあるが,本特集はこれからの動きを想像できるもので大変有意義であった。執筆者はいずれも非常にお忙しい方々ばかりであり,その労に深く感謝したい。
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