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多くの精神疾患は,医療や医学の発展とともにさまざまなレベルで精神科医だけの手には負えないものになってきています。基礎医学との連携,臨床医学間の連携,多職種や福祉との連携などが,精神疾患の多くの領域で求められています。最近,話題になっている自殺対策や認知症対策を考えても精神科医だけでは完結しない状況がきていることは,容易に理解できます。たとえば,2007(平成19)年の自殺総合対策大綱の中でもうたわれているように,早期対応の中心的役割を果たす人材は,医療だけではなく職域,地域,学校と広範にまたがることは当然のことです。しかし,精神疾患の本質を最もよく知っている(べき)精神科医は,立場を代えていつの世でも医療・医学で重要な存在価値を持っていると信じたいところです。
今回,特集として組んだ「成人てんかんの国際分類と医療の現状」の背景には深刻な臨床医学間の連携の課題などがあり,冒頭の佐藤・森本論文にその状況と問題点が簡潔にまとめられています。2015年完成を目指して現在行われているICD改訂作業の中で(丸田・松本・飯森論文),てんかんの行動障害や精神症状を正しく適切に位置づけして,精神科医の「てんかん離れ」に警鐘を鳴らしたいという思いがあります。2007年に国際抗てんかん連盟が提唱したてんかんの神経精神障害の分類案が(松浦・Trimble論文),ICD改訂作業への1つの起爆剤となることを期待しています。本特集は,これらの論文に加え,てんかんの精神症状(千葉論文),てんかん治療の最前線(渡辺・渡辺論文),てんかんの医療連携(井上論文),てんかんの教育・研修(松岡論文)の解説と,さらに精神科おけるてんかんの問題を以前から取り上げてこられた山内氏の論文から構成されています。山内氏は,てんかん学・てんかん医療が歴史的に第三のステージを迎えており,今後はQOLを重視した包括的なきめの細かな医療の時代に入るため,再び精神科医の真価が問われていることを力説されています。
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