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臨床研究を成功に導く入門書
本書は臨床研究の実践に必要な事項を簡明に記載している。研究の計画やデータの扱い方,解析や統計の考え方,論文の書き方,倫理的問題に至るまで紹介している。治験やランダム化比較試験のような多施設共同の大研究を,いきなり勧めるものではない。臨床現場の身近な疑問に,一人一人の医師やスタッフが臨床研究を通じて答えを見いだすための方法を記載している。著者は聖ルカ・ライフサイエンス研究所の臨床疫学センターを中心とした臨床医や研究者である。従来臨床疫学の一般的な話題については,優れた教科書や論説が出版されてきた。また臨床研究の進め方に関して海外からはHulleyやHaynesなどの優れた教科書もある。しかし国内からは臨床研究の実践に関する類書が少なかっただけに貴重である。本書は臨床研究の実務的なノウハウに触れている。このような問題は,実際に研究を始めてから困ることが多い点であった。
EBMの流れの中で臨床医にとって重要なのは,いかにエビデンスを利用するかのみではない。今や,いかにエビデンスを生むことに参加するかも問われているのだろう。エビデンスを上手に利用して患者の問題解決につなげるスキルを磨くためには,エビデンス作りを自ら行うことが優れた方法である。臨床研究の実施は,臨床医のスキル向上の方法の一つであろう。臨床研修必修化の中で,医局や大学とは半歩離れた立場から若い臨床医がキャリア形成を進めている。どのようにして臨床の技能を磨き続けることができるのか,その方法が模索されている。臨床研究は一つの道筋であろう。臨床医個人のスキル向上につながり,ひいては病院全体の診療の質の向上につながる。また臨床研究は,臨床医のみのテーマではなく,看護師,薬剤師,技師の方にとっても診療の質を向上させる方法となりうる。
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