Japanese
English
特集 NO(一酸化窒素)
NOの気道作用
Effects of NO on Airway Functions
玉置 淳
1
Jun Tamaoki
1
1東京女子医科大学第一内科
1First Department of Medicine, Tokyo Women's Medical College
pp.847-855
発行日 1994年9月15日
Published Date 1994/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900920
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はじめに
一酸化窒素(nitric oxide,NO)は低分子量のガス状ラジカルであり,大気汚染物質として知られる窒素酸化物の1つである.1987年Palmerら1)とIgnarroら2)の2つのグループが血管内皮細胞由来の平滑筋弛緩因子(EDRF)の本体がNOであることをほぼ同時に発見したことが契機となり,この物質が生命科学の領域において多大な注目を集めるに至った.NOは生理的条件下では0.1〜5秒の半減期で分解されてしまう不安定な気体であるが,通常の生理活性物質に対する反応でみられるレセプターとの結合やエクソサイトーシスとは異なり,細胞膜や組織中を自由に拡散することにより応答性の速い情報伝達を可能にしている.
生体内NOの生理学的および病態生理学的役割については,特に心血管系における循環調節や神経系でのシナプス可塑性,細胞死の成立などにおける作用が知られており,また免疫系ではエフェクター分子としての機能のほか発癌メカニズムへの関与も指摘されている.さらに本物質は呼吸器系においても種々の細胞から産生放出され,喘息をはじめ肺高血圧やARDSなどの病態発現に影響を及ぼしている可能性が想定されている.
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