Japanese
English
特集 呼吸機能を考える
気道と肺の構造と機能
Structure and Function of the Airways and Lungs
玉置 淳
1
Jun Tamaoki
1
1東京女子医科大学第一内科
1First Department of Medicine, Tokyo Women's Medical University
pp.239-244
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100992
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はじめに
気道・肺は,ガス交換や酸塩基平衡の恒常性維持といった呼吸機能と,生体防御,血液凝固,生理活性物質の代謝,サーファクタント分泌など様々な非呼吸性機能を有している(表1).そのうち最も重要な働きはガス交換,すなわち空気中から得た酸素を体内に取り込み,老廃物である二酸化炭素を空気中に排出することである1).
動物は進化の過程で水中より陸に上がるが,酸素の摂取についても陸上のほうがはるかに有利である.それは水中における溶存酸素は空気中よりもはるかに少ないこと,空気の比重は水の1,000分の1,空気の粘性は水の100分の1であること,酸素の血液中への拡散速度は空気中のほうが水中よりも50万倍も速いことなどによる.初期脊椎動物によって水呼吸に用いられてきたエラは水との接触面積を柔軟で微細な襞状構造によって達成しているため,これを空気中に引き出すと襞間の水の凝縮力によってしぼんでしまい,呼吸媒体との接触面積が水中に比して著しく低下する.そのため,空気呼吸の利点を享受するには新たな呼吸器官が必要となる.この空気呼吸器官はエラのような凸状の酸素摂取面を体外に発達させるのではなく,体内に凹状の酸素摂取面を設けることで,空気の圧力により呼吸媒体との接触面積が広く維持できる.こうして,鰓裂直後の消化管腹壁より分化した囊状器官として肺が発生したわけであるが,それは効率のよいガス交換が営まれるのに適した構造となっている.
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