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特集 手術はどう呼吸を損なうか
術後の睡眠時呼吸障害その発症—そのメカニズムに関する考察
Postoperative Disordered Breathing during Sleep:Hypotheses for the Pathogenesis
磯野 史朗
1
Shiroh Isono
1
1千葉大学医学部麻酔科
1Department of Anesthesiology, Chiba University School of Medicine
pp.261-266
発行日 1998年3月15日
Published Date 1998/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900065
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体の一部に加えられた手術侵襲は,人体のあらゆる組織・臓器,そして,それらを統合する液性・神経系のネットワークに様々な影響を及ぼす.術後の呼吸障害は,そのひとつの表現形に過ぎないが,通常この呼吸障害により招来される低酸素血症は,全身のあらゆる臓器機能を損なう可能性が高いという点から,この治療は術後の患者管理において最も優先されるべきである.もちろん,同じ手術侵襲が加えられても,すべての患者で同等の呼吸障害が起こるわけではなく,これには,患者自身の有する素因・患者を取り巻く危険因子が大きく関与する.
従来,術後の低酸素血症は,覚醒時に行われる動脈血血液ガス分析により評価されてきた.この覚醒時の低酸素血症状態は,短時間の間に大きく変化することはなくほぼ一定で(constant hypox—emia),数時間おきの血液ガス分析でも経過観察は可能である.通常,手術直後より始まり,第2あるいは第3病日をピークとして約1週間持続する.現在では,その大きな原因は,機能的残気量(FRC)低下による酸素化能の障害であると考えられている.血液ガス分析の普及,人工呼吸管理の発達など,多くの研究がこの病態解明・治療法の確立のためなされ,術後患者管理は大きく進歩した.
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