Japanese
English
特集 呼吸・循環器治療薬の狙いと効果の現実
呼吸促進薬と呼吸不全
Respiratory Stimulants and Respiratory Failure
海老原 覚
1
,
菊池 喜博
1
Satoru Ebihara
1
,
Yoshihiro Kikuchi
1
1東北大学医学部第一内科
1The First Department of Internal Medicine, Tohoku University School of Medicine
pp.833-838
発行日 1996年8月15日
Published Date 1996/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900009
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はじめに
呼吸促進薬とは直接あるいは間接に呼吸中枢を刺激して換気量を増加させ,血液ガスの改善を図る薬剤である.今日,わが国において呼吸不全の治療薬として呼吸促進薬が使用される頻度は決して多くない.というのは,近年の呼吸管理に関する知識の蓄積と普及,高性能なレスピレーターの開発と普及およびIRCUの設置などにより,目的とする換気量を確実に確保できる挿管あるいは無挿管(BiPAPやnCPAP)による人工呼吸が使用されることが多いからである.
しかしながら,睡眠剤などの呼吸抑制薬の拮抗薬として,また麻酔からの覚醒遅延時,人工呼吸からの離脱時などに,あるいは未熟児の無呼吸発作に対しての有用な薬剤として用いられることがある.われわれ呼吸器科領域での呼吸促進薬の使用は慢性閉塞性肺疾患の急性増悪時,睡眠時無呼吸症候群,あるいは原発性肺胞低換気症候群患者などの限られた症例に使用されているのが現状である.しかし,このような呼吸促進薬の使用状況は国によって多少の差異があり,ヨーロッパではアメリカや日本と比べて慢性呼吸不全に対する呼吸促進薬の報告が多く,呼吸促進薬の可能性の追求が積極的である.
以下本稿では,それぞれ異なる作用機序を持つ呼吸促進薬であるストリキニーネ,ドキサプラム,Thyrotropin releasing hormone(TRH),キサンチン製剤およびプロゲステロンについて作用機序の解説を中心にわれわれの得た最新の知見を紹介しながら概説することを試み,それを通して今後の呼吸促進薬の方向性を考えてみたい.
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