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■最近の動向 呼吸機能上,機能的残気量(Functional Residual Capacity:FRC)は拘束性障害が主体の脊柱彎曲症や陳旧性肺結核では減少する一方,閉塞性障害を示す肺気腫症では増加するなど,異なる換気障害の種類によって大きく相違する.言い換えれば,FRCの変化に応じ,それぞれの呼吸筋の長さが変化するため,呼吸筋の長さ・張力関係(length-tensionrelationship)も変わることになる.したがって,脊柱彎曲症や陳旧性肺結核に伴う胸膜ベンチなどの拘束性障害では,FRC減少により吸気筋長が伸び,結果として吸気筋効率が相対的に増大するが,肺気腫症を代表とする閉塞性障害では,FRC増大が吸気筋長を短縮するものの呼気筋長を伸ばす結果,呼気筋の効率が改善するはずである.
脊柱彎曲症や陳旧性肺結核に伴う胸膜ベンチや肺気腫症など,換気障害の違いには関係なく,病状が悪化し呼吸不全へと進行した患者には在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT)が有効なことが既に明らかとなっている.しかし,たとえHOTを行っていても,これら患者の肺胞低換気の進行を食い止めることは不可能なこと,肺胞低換気自体急性増悪の発症を促進してしまうことが,日常診療上大きな問題であった.このようななかで肺胞低換気進行例の少なくとも一部に対し,鼻マスクを用いた非侵襲的な補助呼吸療法(non-invasive inter—mittent positive pressure ventilation:NIPPV)が,さまざまな観点から有効なことが近年明らかとなった.NIPPV療法の有効性発現の機序は不明だが,呼吸筋疲労改善説が現在有力視されている.
ベルギーのDe Troyerらは最近,種々の呼吸器疾患患者の呼吸筋活動に関する一連の興味ある報告を行っているが,これらの解析結果はNIPPV療法の機序解明にも有用と思われるので,今回はこれらの論文を紹介する.
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