巻頭言
インフルエンザと結核から見えてくる日本医療の先進性と後進性
渡辺 彰
1
1東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門
pp.1135-1136
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205853
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わが国の医学は世界のトップではないが,医療はどうか? 感染症の領域ではインフルエンザ医療が世界のトップにある一方,結核医療は周回遅れを重ねている.
われわれは自らのインフルエンザ医療の世界順位を,2009年の新型インフルエンザで知った.ノーベル医学・生理学賞の受賞者が世界最多で,医学では世界一の米国が最多の死亡数(2010年2月中旬までで12,000名)だったのに対し,死亡頻度の最少はわが国だった(同200名)のである.わが国は世界で最多の種類の抗インフルエンザ薬を実用化し,迅速検査キットも汎用されているが,世界での普及は遅々としている.わが国の優れた国民皆保険体制や医療アクセスの利点も大きかったが,世界のインフルエンザ診療は遅れているのである.遅れている世界を見習うのは危険であり,海外のガイドラインなどに盲従すれば国民の利益を損ないかねない.
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