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はじめに
パーキンソン病の歩行障害は前傾前屈姿勢,上肢振り動作の消失,歩幅や歩行速度の減少,小刻み歩行などの特徴を示す1,2).この歩行障害は,患者の日常生活上の活動範囲を狭めるばかりか転倒の原因にもつながる恐れがあり,歩行障害改善に向けた対処法が重要な課題となっている.
パーキンソン病のマネージメントは,Hoehn and Yahr stage(以下,Yahr stage)Ⅰ,Ⅱの段階からスポーツや理学療法を積極的に取り入れ,障害の予防や障害の進行を遅らせるとともに,活発なライフスタイルを構築することが重視される3,4).歩行トレーニングはこの段階における第一選択プログラムであり,これまでに視覚刺激5,6)や聴覚刺激7,8)を用いた方法が散見される.また,トレッドミルを用いた方法としてMiyaiら9)は,体重サポートによるトレーニングを適用し,歩行速度と歩数の有意な改善が得られたとし,Pohlら10)は,患者の最大歩行速度を採用したトレーニングの即時効果として,歩行速度や重複歩距離の改善を報告している.これらの報告では前進歩行を用いているが,歩行トレーニングには後進歩行の方法もあり,主に整形外科領域における下肢の靱帯損傷術後や障害予防のプログラムとして取り入れられてきた11,12).後進歩行の歩容は,歩行周期中立脚期前足部から着床し,遊脚期では下肢振り出しを股関節伸展位にて行う.この点が前進歩行と大きな違いであり,後進歩行により初期着床期にハムストリングスや腓腹筋の筋活動がより促進される13).
筆者らは,前傾前屈姿勢や歩幅の減少を伴ったパーキンソン病患者にとって,後進歩行の特色を活かしたトレーニングが体幹や股関節の伸展を促通し,前傾前屈姿勢の改善と歩幅の増大に有効ではないかと考え,Yahr stageⅡとⅢの症例に対しトレッドミルを用いたトレーニングを導入した.その結果,即時効果として,歩行周期中,骨盤帯および股関節の伸展,歩幅の増大,前傾前屈姿勢の改善を経験した14).そこで本研究は,トレッドミル後進歩行トレーニングが患者の歩行能力や日常生活動作に及ぼす影響を検討した.
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