Japanese
English
特集 心筋生検をめぐって
拡張型心筋症と心筋生検
Myocardial biopsy in dilated cardiomyopathy
中山 康
1
,
呉 翔
1
,
北浦 泰
1
,
河村 慧四郎
1
Yasushi Nakayama
1
,
Xiang Wu
1
,
Yasushi Kitaura
1
,
Keishiro Kawamura
1
1大阪医科大学第3内科
1The Third Department of Internal Medicine, Osaka Medical College
pp.1171-1177
発行日 1988年11月15日
Published Date 1988/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205355
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はじめに
拡張型心筋症(DCM)は原因不明の心筋疾患の一病型で,心室の拡張と心筋収縮力の減弱を某本病態とし,予後はしばしば不良である1)。本症は均質の疾患単位というより発症要因の異なるsubsetsからなる疾患群,あるいは多因子関与(multifactorial)の疾患であると考えられている。事実,臨床的発現や経過が症例によりさまざまで,本症の診断は本症が原因不明の疾患と定義されているため,原因が明らかな心筋疾患(特定心筋疾患を含む)を除外してなされる。心内膜心筋生検は本症と特定心筋疾患との鑑別に際し有用と考えられている。特に特定心筋疾患のなかで表1のように特徴的な心筋組織病変を示す疾患であれば心筋生検により確定診断が得られる。
心筋生検法の詳細については,本特集の他稿で取り扱われるのでここでは省略する。留意すべきは,心内膜心筋生検では組織標本の大きさが一個当たりほぼ半米粒大で採取部位にも制約があり,心筋炎などのように病巣が散在性である場合はsampling errorが起こりやすい。しかし標本組織がきわめて新鮮であるため,光顕・電顕による通常の組織形態学的検索にとどまらず,最近は細胞化学,生化学,免疫学,ウイルス学などいわば学際的な検索が可能となりつつある。現在DCM患者における心筋生検の意義としては,上述の鑑別診断のほかDCMの心筋の病態の解明また,予後,治療,成因,病態生理などとの関連が検索されている。
本稿ではDCM患者における生検心筋に関連した最近の知見を概説する。
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