Japanese
English
特集 慢性心筋炎—診断のガイドライン提示とその後の展開
慢性心筋炎から拡張型心筋症へ
The Inflammatory Process in Chronic Mvocarditis
豊崎 哲也
1
,
廣江 道昭
2
Tetsuya Toyozaki
1
,
Michiaki Hiroe
2
1千葉大学医学部附属肺癌研究施設病理研究部門
2東京医科歯科大学医学部第二内科
1Division of Pathology, Institute of Pulmonary Cancer Research, Chiba University School of Medicine
2Cardiology Division, Second Department of Medicine, Tokyo Medical and Dental University
pp.443-449
発行日 1998年5月15日
Published Date 1998/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901686
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はじめに
心筋炎は心筋組織の炎症性疾患と定義され,病理組織学的にはリンパ球などの炎症性細胞浸潤とそれに近接して存在する心筋細胞の壊死像が認められる1).その病因としては感染性・アレルギー性・中毒性などがあるが,原因不明の心筋炎の多くはウイルス性と考えられている2).ウイルス性心筋炎は無症状のものから心原性ショックに陥る劇症型まで多彩な臨床像を呈するが,適切な治療によって完治する症例も少なくない.したがって,ウイルス性心筋炎は一般には急性の経過をとる予後良好の心疾患と考えられているが,なかには亜急性・慢性に経過し,恒久的な心機能低下や死に至る症例も存在する3).心筋炎の長期経過に関する諸家の報告をまとめると6〜30%の症例が拡張型心筋症(DCM)様病態に移行している4).一方,DCMに対する心筋生検標本や剖検標本を用いた病理組織学的検討の結果,リンパ球浸潤と近接する心筋細胞障害像が観察される症例が報告され5〜7),細胞性免疫による心筋細胞障害の遷延する,いわゆる「慢性(活動性)心筋炎」の存在が注目されるようになった.
本稿では,ウイルス性心筋炎における遷延性心筋細胞障害機序,慢性心筋炎の臨床像・病理組織所見を通して,慢性心筋炎とDCMとの関連について症例を呈示しながら概説したい.
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