Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
最近1年間の拡張型心筋症における心筋自己抗体の話題
拡張型心筋症は,遺伝因子を背景として,ウイルス性心筋炎などが契機となり,遷延する自己免疫異常によって生じると想定されている1).これら3因子は互いに関連しており,それを裏付ける報告も多い.ウイルス性心筋炎,特にコクサッキーウィルス感染によって,抗ミオシン抗体などの心筋抗体が産生される2).また,小児脂肪便症(Celiac disease)と自己免疫性心筋炎との関連について報告があるが,本邦での報告は皆無である3).以前より心筋抗体は心筋障害による2次的副産物で,非特異的なものであるとの認識がされていた.これは抗ミオシン抗体(もしくはB細胞)が単独で心筋炎を生じさせない事実に基づくと想定される.しかし,ミオシン免疫によるCD4陽性T細胞を介した心筋炎の発症にも補体C3活性上昇が必要であることが,インターロイキン6欠損マウスにおいて報告された4).心筋炎患者における抗ミオシン抗体については,治療指標としては有用であることが明らかにされた5).6カ月間のプレドニゾロンとアザチオプリンによる免疫抑制治療を施行した場合,心筋内にウイルスゲノム(慢性C型肝炎ウイルス以外)が検出されず,抗ミオシン抗体を有する症例ほど,治療効果が現れた.心筋内に慢性C型肝炎ウイルスが検出される心筋炎患者は約5%存在するが,いずれも抗ミオシン抗体を有しており,この免疫抑制治療が有用であった6).最近では新たな心筋自己抗体の報告や,拡張型心筋症以外の心不全患者における心筋自己抗体の研究も行われている.産褥性心筋症患者でも抗心筋抗体が検出され,免疫ブロット法によって抗原が同定された7).抗原分子量は拡張型心筋症患者のものとは異なり,心筋抗体が2次的副産物というよりも,疾患特異的である可能性が示されつつある.
1・有望となった拡張型心筋症患者に対する免疫吸着療法
拡張型心筋症患者に対する免疫吸着療法は,1996年にWallukatらによって初めて報告された8).翌年には日本を含む世界各国を対象とし,「自己抗体除去による心筋症の治療」として特許申請がなされている9).この新規治療法の効果については,すでに2000年に2つの患者対照研究によって検証がなされている10,11).自己抗体を有する拡張型心筋症患者を,免疫吸着療法施行の有無により2群に分け,3カ月~1年間観察して治療効果が確認された.いずれもドイツからの報告であり,治療群も9例,17例と小規模なものではあったが,初めてのエビデンスであった.以下にあげるような未解決問題も残されていたため,世界的に流布されてはいなかった.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.