増刊号 Common Disease 200の治療戦略
循環器疾患
拡張型心筋症
和泉 徹
1
1新潟大学医学部第1内科
pp.63-66
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903987
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疾患概念と病態
拡張型心筋症の基本概念は,図1に示したとおり3つの基本病像からなる.収縮力低下や拡張障害に基づく心筋不全と,左室や左房拡大を主徴とする心拡大,その結果生じた心筋重量の増大,すなわち心肥大の3つである.本症がうっ血型心筋症と呼ばれていた頃とは異なり,今日では早期発見が常識化した.したがって,心症状が乏しく,心筋不全を端的に示す壁運動低下(駆出率低下)と収縮末期容量の増加(左室拡大)を主徴とする患者が多くなってきている.その分,拡張型心筋症の診断と治療には心エコー検査が重要である.
本症の成因はいまだ特定されていない.病因としては,遺伝子や代謝異常,心毒素,微小循環不全,活性化酸素,カルシウム過負荷,心筋炎,自己免疫,除神経などが候補としてあげられている.病因が何であるにせよ,①心筋病変の進行度,②慢性心不全の重症度,③致死性不整脈の合併,④血栓塞栓の発症,が生命予後を左右する.患者の治療においては,これらの病態の正確な診断を先行させなければならない.
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