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肺のガス交換の場である肺胞隔壁は,肺胞上皮細胞,毛細管内皮細胞や間質結合織などから構成される。生体が肺のガス交換機能を適切に営むためには,肺胞上皮および毛細管内皮の細胞膜が水溶性分子に対する透過性を正常に維持し,肺を"dry"の状態に保つ必要がある。肺胞領域の種々の炎症,循環障害,物理化学的刺激などによる肺損傷では,これら細胞膜の透過性が亢進し,形態的には肺浮腫を,機能的にはガス交換障害を招来するといえよう。従って肺胞隔壁を構成するこれら細胞膜の透過性を測定することは,種々の肺疾患における肺損傷の程度を定量的に評価し,肺疾患の病態生理を解析するうえで有用であると考えられる。
臨床例において肺胞隔壁の透過性を定量的に測定する方法はいまだ確立されてないが,従来より2種類の方法が試みられてきた。1つは多重指示薬希釈法であり1,2),他は本稿で取り挙げるガンマ線(γ線)の体外計測による方法である3〜9)。14C-尿素を透過性指示薬とする多重指示薬希釈法は,動脈系からの採血を要するため患者への侵襲が大となる。また多重指示薬希釈法は肺全体としての透過性を推定するため,肺内の部位毎の異常を検出できない。更に推定される透過性は尿素(分子量60)に対するものであり,肺血管内外の水分分布を決定している蛋白分子に対するものでないなどの欠点を有している。これに対してγ線の体外計測法はこれらの欠点を克服し得るものであり,今後しだいに臨床の場で用いられることが期待される。我々は臨床例において99mTc標識化合物をトレーサーとして用い,γ線の体外計測による肺胞隔壁透過性の推定を行なってきた5,9)。本稿では体外計測による自験の成績の一部を紹介し,本法の臨床的意義について述べたい。
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