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うっ血性心不全に対する末梢血管拡張療法は強心薬や利尿薬とは全く異なった新しい機序にもとづく治療法であり,今日次第に評価が高まり,広く臨床に普及するに至った。しかし,一方では未解決な問題も少なくない。心不全への血管拡張薬の応用としてははるか以前に,すなわち,1944年Sarnoff & Farr1)あるいは1956年Bur—ch2)の先駆的業績がある。しかし,当時は一般に深く認識されるに至らなかった。それは本剤使用の理論的裏付けが十分に理解されなかったこと,本剤の有効性を評価する適切な手段をもたなかったこと,正常血圧を示す心疾患患者に投与する場合の血圧下降,頻脈の発生など血管拡張に伴う副作用の出現が懸念されたことなどによると思われる。しかし,この長い潜伏期をへて,1972-3年頃より再評価され始め3),今日の隆盛をみるに至ったのは,1つは心臓生理学の新しい進歩がもたらされ,心臓のポンプ機能を調節する前負荷,後負荷,心筋収縮性,心拍数などの意義が明らかにされ4),それによって血管拡張療法の作用機序の理論的裏付けが得られたこと,Swan-Ganzカテーテル法により右心系のみならず,左心系の血行動態や心拍出量が侵襲的ではあるが病床側で容易にモニター出来るようになったこと5),つまり,血管拡張薬の急性効果が肺毛細管圧を通じ左室充満圧あるいは肺動脈圧の下降,あるいは心拍出量の増加として客観的に把握できるようになったこと,以上の血行動態的改善に加え,呼吸困難をはじめとする自覚症状の著明な改善が得られたこと,さらに実際に心不全例に使用してみて,かなり大量を投与しても著明な血圧下降や心拍数の増加がおこらなかったこと3),などによる。
しかし,これらの薬物を慢性うっ血性心不全に継続して使用した場合にこのような改善が急性期の場合と同様に持続するものなのかどうか,その場合の有効性はどんな方法によって評価できるか,その他,表1に示すような問題が提起され,今日慢性心不全についてはその有効性が未だ十分認識されるまでに至っていない。
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