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1年間つづけてきた私のゼミナールも,今回で終了である。読者は度々遺伝という言葉が出てきたのを記憶されていると思うので,締めくくりを遺伝と呼吸調節の関係にしぼって解説したい。はじめ不確実と思われた現象が確かな事実として認められてゆく過程,マイナーな修正を加えながら正しい全貌が明らかにされてゆく過程,一見臨床と無縁と思われた事実が重要な臨床的意味を持つことなどを読みとっていただければ幸甚である。
今から10年前のこと,Arkinstallら(マギル大学)が双生児のCO2換気応答を調べてみたところ,換気応答自体は一卵性双生児も二卵性双生児も組内の似方は同じであった。しかし、CO2再呼吸中の一回換気量応答は一卵性の方が二卵性よりも似ており,従ってCO2換気応答の一部には遺伝の関与があると結論した(J.AppLPhysiol.36:6,1974)。この研究は,CO2換気応答には人種差があるとの報告(Beral&Read,Lancet 2:1290,1971)やマラソン選手とスプリンターにはCO2換気応答に差があるとの報告(Rebuck,学会発表,1970)に刺激されたものであった。1978年になり,コロラド大学のCollinsらは低02およびCO2応答を平均年齢14〜17歳の健康双生児を対象に測り,hyperoxia下のCO2応答には遺伝の関与はないが低O2応答にはそれが明らかであると報告した(J.Clin.Invest.62:105,1978)。しかしこの研究(図4)をみると,CO2応答において一卵性の組内で近似値をとらなかったのは12組中わずか1組であり,この1組のために統計処理上negative dataとなったのは明らかであった。
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