呼と循ゼミナール
呼吸調節(3)—低酸素換気応答の可逆性
川上 義和
1
1北海道大学医学部第一内科
pp.582
発行日 1984年6月15日
Published Date 1984/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204459
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低酸素換気応答の値は正常人のなかでも分布が幅広く,殆んど0に近い低値も珍しくない。このいわゆる正常値を規定する因子は数多く,例えば年齢,性,体格,性周期,栄養,遺伝,スポーツ体験,人種などなどである。しかし,これらの全てが定説として確立している訳ではない(例えば年齢,性,人種など)。このように規定因子(と考えられるものも含めて)が多いために,正常と異常の鑑別が難しいのである。
低酸素換気応答(あるいはP0.1応答)が0に近い場合,はたして異常なのであろうか。一見全く疾患のない健康人にも時々このような例がある事を考えると,必ずしも異常とは言えない。心肺疾患や糖尿病のような場合は低値をとる患者が多いので,病態と何らかの関係があるのは確かであるが,問題はその機序に正常人と病態で差があるか否かである。これについては明快な解答は未だ出ていない。二つの可能性が考えられる。一つは低酸素換気応答の低値は正常人と患者で全く異なった機序による場合と,いま一つは同じ機序でも刺激—応答関係が多少異なるにすぎない場合である。私共が同程度に鈍い応答を示す健康人と肺気腫患者を比較したところ,Doxa—pram静注により健康人の応答は増加したが肺気腫では不変であった(Yoshikawa T.et al.Am.Rev.Respir.Dis.投稿中)。これについても上記二つの機序を区別出来なかった。呼吸不全のCO2蓄積に対してDoxapramを使う事があるが,効果の著しい患者と無効の患者があって使用してみなければ予測出来ない面がある。これにも上記二つの機序が考えられる。
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