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"呼吸と循環"は表裏一体をなすものであり,本誌がその名称を掲げていることから,ここに寄稿する場合,たとえそれが呼吸に関する内容の論文でも,循環面からの考察を入れないで,これでよいのだろうかという反省みたいなものが残るのは私だけだろうか。
ところで筆者が特に関心をもっている分野は気道を介しての治療法一般であって,これは全身麻酔をかけるとき,何とか安全に確保しなければならないのが気道であるからである。ここに吸入療法に関心をもつに至った第一の原因がある(呼と循19:708,1975)。ところがいまだに迷っているのがこれらの場合に用いられる用語である。まずhumidifyすることは加湿とも給湿ともいわれ,いずれも同じ意味で用いられている。学会用語集ではhumidificationを給湿,humidifierを加湿器となっている。現在臨床で使用されているhumidifierにはheaterのついたものがあり,これは給温とはいおない,加温式といっている。従って湿度をあたえることも加湿という用語を使用して,同じ"ゴロ合せ"をする,すなわち加温加湿という用い方がよいとする意見,しかし他方どちらも"加"にするよりも温度には"加",湿度には"給"をつけ加温給湿とするように別の言葉にした方が間違いが少いとする意見もある。その理由はもともと湿度を与えるのが主体で,たまたまこれに温度を付加するのだとの考えで,温度には"加"を付すのだというわけである。やはりそれぞれもっともな意見で甲乙つけ難いが如何なものか。このhumidityの呼び方と並んでもう一方nebulization,これは噴霧でよいが,この場合の粒子aerosolの呼び方がまたいくつかある。胸部疾患学会の用語ではエロゾールまたはエアゾールいずれでもよいとなっているが,耳鼻咽喉科学会ではエアロゾルと呼んでいる。そして麻酔学会ではエア〔ロ〕ゾールとして"ロ"は省略してもよいとしている。要はaerosolなる文字の発音のきこえ方を日本文字にしたもので,さすが耳鼻咽喉科の先生方は微妙なところまで聞いておられるように思える。エロゾールはドイツ語読みまたはローマ字読み式と思われる。しかしもともとガスの代表である空気の中にゾル状に浮遊させた粒子であるという意味で空気のエアーにゾルをくっつけた呼び方が最もすっきりした日本語と考えるが如何なものか。
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