呼と循ゼミナール
陽圧呼吸の作用—おもに循環系に対して(その11)
沼田 克雄
1
1横浜市立大学医学部麻酔科
pp.620
発行日 1983年6月15日
Published Date 1983/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204241
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前回まで,陽圧呼吸が一般的傾向として心拍出量を減少させる方向に働らくことの機序について,多くの報告と諸説を俯瞰し,特徴あるものをとりあげて紹介してきた。これらをまとめてみると,陽圧呼吸による心拍出量の減少は,静脈還流の減少によるとする報告群と,広い意味での心機能抑制によるとする報告群に二大別される。後者の内容は,冠血流減少,contractilityの低下,complianceの低下,ventricular interdependence,心の形状の変化,humoral factorによる抑制,などである。それぞれの報告はそれぞれの設定条件下ではいずれも正しいことなのであろうが,これらを統一してまとめることはまだかなり難しい現況にある。ただ,全く混沌として群盲象を撫でるに似たものとはいえず,一歩一歩よりよい方法の開発と知見の蓄積がなされつつあることは疑いをいれない。たとえば,静脈還流量の変化ということと密接に関連づけて考えられている心のfilling pressureであるが,これを大気圧に対するそれではなくて,trans—mural pressureとして表現されるべきであるとする認識はひとつの進歩といえよう。しかし,transmural pressure(tmP)で表わせば諸報告がきれいに一致した結果を示すことになるかというとそうはゆかない。
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