呼と循ゼミナール
陽圧呼吸の作用—おもに循環系に対して(その10)
沼田 克雄
1
1横浜市立大学医学部麻醉科
pp.274
発行日 1983年3月15日
Published Date 1983/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204191
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肺の主なる機能はガス交換と見做されるが,その内皮細胞が種々の物質の合成,代謝をいとなんでいることはすでに多くの報告によって示されている。前号でも述べたごとく,MannyらのグループはPEEPにより肺がそのstretchに対する反応として,心筋を抑制するような物質を分泌するのではないかと考えた。肺はたとえばprostaglandin (PG)のような血管作動物質を急速に産生したり不活性化したりする代謝機構をそなえていることが知られているし,また肺の物理化学的な刺激によりPG遊離が促進されることも知られているからである。
Mannyら1)は,犬の摘出心の左室にballoonを留置してその容積を5段階に変え,Stariing curveを求めた。この摘出心の冠血流は別の犬(support dog)から動脈血を導いて維持した。こうしておいてsupport dogに種々の条件をあたえ,その時の摘出心の反応態度を観察したのである。結果は,①support dogに15cm H2O,PE—EPをかけるとその心拍出量,血圧の低下がみられる一方,摘出心ではStarling curveは下方にシフトした。摘出心のコンプライアンス,灌流圧,心電図上のSTはいずれも変化しなかった。②心と肺の上流と下流すなわち肺動脈,動脈冠静脈洞の血中のprostaglandin (PGF 2α)とそのmetaboliteのレベルはPEEP前後で変化を認めなかった。
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