呼と循ゼミナール
陽圧呼吸の作用—おもに循環系に対して(その6)
沼田 克雄
1
1横浜市立大学医学部麻酔科
pp.1120
発行日 1982年11月15日
Published Date 1982/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204111
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ごく新しい文献,たとえばCassidy1)(1982)の報告では,PEEPによる心拍出量低下の原因には拡張終期時の左心室容量の変化や,左右両心室の形状の変化が関与しているという。ともあれ,順を追う都合上,今回はまずScharfら2)(1977)の報告をとりあげてみたい。Scharfはこう考えた。PEEPが心拍出量を減少させる機序は,静脈還流の減少にもとづくという考えが大勢を占めている。静脈還流がPEEPで減少するものならばその機序は次の2つのいずれかであろう。ひとつは右房圧が上昇し,末梢からの静脈還流のための圧勾配が,小さくなるということ,他は,右房圧はともあれ,PEEPにより末梢循環になんらかの変化がおきて静脈還流が減るのだと。
前者の考えにまず立ってみよう。PEEPで右房圧が上昇する機序は次のいずれかである。①PEEPによる胸腔内圧上昇が右房に伝達される,②PEEPにより,肺容量が通常のFRCレベルより増す。前回にも触れたが,肺血管抵抗は肺容量に依存的であって,FRCレベルの時にもっとも低い,という従来の概念に照すと,PEEPは肺血管抵抗を上昇させ,右室の後負荷を増し,これが右房圧上昇に反映される。
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