呼と循ゼミナール
陽圧呼吸の作用—おもに循環系に対して(その3)
沼田 克雄
1
1横浜市立大学医学部麻酔科
pp.578
発行日 1982年6月15日
Published Date 1982/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204007
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Guyton (1973)1)は,気道に陽圧をかけることの心拍出量にあたえる影響について次のように分析した。人の気道に突然80 mmHgの陽圧をかけると,心拍出量曲線はその直後著明に右にシフトする。しかしながらこの時点での最初の数秒間に静脈還流曲線はほとんど変らない。ここで心拍出量曲線と静脈還流曲線の交点すなわち平衡点は右肩下りの静脈還流曲線に沿って右下方に移動することになり,心拍出量は0.5l/min程度に著減する。しかしこの反応はごく一過性であり,次の数秒以内に2つの代償機転が働らく。ひとつは強い呼気筋(主に腹筋)の気道内陽圧に抗する収縮で平均血圧を上昇させるように働らき,もうひとつは肺内陽圧が肺や心の中の血液を体循環の方へ送り出すように作用する。これらの作用は静脈還流曲線を上方にシフトさせ,平衡点は心拍出量曲線に沿って上方に移動し,右房圧8mmHg,心拍出量4l/minといった点におちつく。
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