解説
急性心筋虚血—EndocardiumとEpicardium
山崎 元
1
Hajime Yamazaki
1
1慶応義塾大学呼吸循環内科
1Dept. of Int. Med., Keio Univ.
pp.595-603
発行日 1981年6月15日
Published Date 1981/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203782
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左室心筋への血流は拡張期に優位であり,内層(Endo—cardium:ENDO)と外層(Epicardium:EPI)とでは,心一周期の間に異った血流の分布がなされる。すなわち,収縮期においても心筋内圧が冠灌流圧より低い1)EPIでは,収縮期拡張期を通して血流が保持されるのに対し,ENDOでは,収縮期に心筋内圧が冠灌流圧を凌駕するため機械的に遮断され,拡張期における血管抵抗の著しい減少(diastolic autoregulation)2)によって血流が保たれている。これは,EPIに比較してENDOでは,血管抵抗を減少させる予備能を,正常状態でもより多く消費していることを意味する。心筋内圧に対して相対的に冠灌流圧が低い冠動脈狭窄症や大動脈弁狭窄症などでは,その予備能の少ないENDOが容易に虚血に陥る。図1は,72時間に及ぶshock状態ののち死亡した大動脈弁狭窄症例(左室—大動脈圧較差80mmHg)の心臓の割面である。中隔を含めた左室全周のENDOに限局した梗塞がみられる。
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