Japanese
English
解説
虚血心筋保護
Protection of ischemic myocardium
小林 明
1
Akira Kobayashi
1
1浜松医科大学第三内科
1The 3rd Department of Medicine, Hamamatsu University School of Medicine
pp.395-403
発行日 1989年4月15日
Published Date 1989/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205455
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はじめに
虚血心筋では酸素欠乏による心筋細胞へのさまざまな生化学的および形態学的な障害が生じる。虚血心筋における生化学的変化として,エネルギー源であるadeno-sine triphosphate(ATP)の減少,ATPを再合成するのに必要なadenine nucleotide (AMP.ADP)の誠少,心筋組織内のpHの低下,脂肪酸酸化と糖代謝の抑制,代謝産物の蓄積による細胞膜系の構造および機能への影響などが起こる。虚血心筋が高度になると,心筋細胞は不可逆的な障害を起こしてくるが,生化学的変化がどのような作用機序により不可逆的な心筋細胞障害を来たすかについてはいまなお不明な点が多い。
しかし,今日までに虚血心筋細胞障害の機序の検討のみならず,虚血心筋を保護し,その結果心筋梗塞巣を縮小させ不可逆的な心筋障害を予防改善させるためのさまざまな試みがなされてきた。最近では,早期に狭窄している冠動脈を拡張しあるいは冠血流を再開して虚血部に酸素を十分直接的に供給する目的で,冠動脈血栓溶解療法(PTCR)と経皮的冠動脈形成術(PTCA)方法が行われるようになり,それに伴う再灌流傷害に対する心筋保護という新たな課題が提示されている。
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