Japanese
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特集 セロトニンと循環器疾患
セロトニンと心筋虚血
Serotonin and Myocardial Ischemia
湊口 信也
1
,
藤原 久義
1
Shinya Minatoguchi
1
,
Hisayoshi Fujiwara
1
1岐阜大学医学部第二内科
12nd Department of Internal Medicine, Gifu University School of Medicine
pp.577-580
発行日 2002年6月15日
Published Date 2002/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902483
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はじめに
セロトニン(5—HT)は,トリプトファンが律速酵素であるトリプトファン水酸化酵素(5—HT)によって水酸化されて5—ヒドロキシトリプトファン(5—HTP)となり,これが脱炭酸酵素により脱炭酸されることによって生成される.5—HTは中枢では縫線核に存在するセロトニン神経細胞内に,末梢では腸管に存在するクロム親和性細胞内に存在する.したがって,末梢においては,セロトニンは腸管におけるクロム親和性細胞内で合成され貯蔵されているが,一部のセロトニンは血中に放出されて流血中に存在する.さらにこの一部が血小板,肥満細胞に取り込まれ貯蔵されている.これらが,病的な状況で血小板凝集1)あるいは肥満細胞の脱顆粒2)によりセロトニンを局所で遊離することになる.
5—HTは,様々な血管に対して強力な血管収縮作用を示し,直接作用に加えて低濃度の5—HT存在下においてはノルアドレナリンなどによる血管収縮作用を増強する一方,血管内皮細胞に作用して血管拡張に作用する場合もある3).さらに,心臓においては灌流心,乳頭筋において陽性変時作用,陽性変力作用を示す一方,虚血心筋に対しては障害性に作用することなどが知られており,5—HTは心臓・血管系の生理・病態に深く関与し重要な役割を果たしている.
本稿では,セロトニンと虚血心筋との関係,特にセロトニン受容体のなかでも特に虚血心筋と関係の深い5—HT2受容体を介する作用について概説し,5—HT2受容体遮断薬が心筋虚血の新たな治療薬となりうる可能性について述べる.
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