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肺循環は肺動脈系と肺静脈系が肺毛細管床を中心として構成する低血圧系であり,その機能と構造において体循環とは種々の点で相違している。しかし,従来はその差異が強調される反面,類似点が軽視される傾向のあったことも否定できない。さらに,肺循環の研究にあっては心カテーテル検査を欠くことができない点や,その微小循環を可視下におくことの技術的困難さも,体循環に比べて肺循環研究のおくれを招いた原因となっている。最近,体循環において肺動脈系をresistance vessels,静脈系をcapacitance vesselsと考え,それらの総合において体循環の機能と構造(形態)をとらえる考えかたは生理学方面から開拓され,次第に臨床的研究に活用されようとしている。これにたいし,肺循環の研究においては,肺動脈系のみが取り上げられ肺静脈系は不当に軽視されているのは片手落ちといわざるをえない。これは,左心カテーテル検査の普及がおくれていることに密接な関係があるとは思うが,実験的研究はもちろん臨床的研究においてもそのような方法論的な欠陥を見逃すことは正しくない。その意味で,われわれの教室が今までに行なった研究の成果を肺気腫合併肺結核に焦点をしぼって述べてみたいと思う。
われわれは重症肺結核患者の心肺機能検査を進めて行くに従い,その主体は拘束性換気障害であるが,これに閉塞性換気障害が加わる場合その外科的治療の予後が不良であることを知った。しかも,血液ガス所見からいえば,低O2血症と低CO2血症が前面に現われ,高CO2血症は末期にならないと現われず,この点が慢性肺気腫患者と相違する点であると考えた。そこで,肺気腫合併肺結核の病態生理(根本光規1))が研究の対象となったわけである。
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