EDITORIAL
肺気腫
村尾 誠
1
1北大第1内科
pp.385
発行日 1969年4月10日
Published Date 1969/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202611
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どの疾患についても,ある程度共通して言えることであるが,疾患の定義が病理解剖学的所見に基づいているにもかかわらず,その変化の性質・広がりが,その患者の臨床像からは診断しかねる場合がある.言いかえれば,病態時における形態と機能の関連についての不適合が問題となる.慢性肺気腫もその意味で,近年問題視された疾患の1つである.肺機能検査法の診断的価値の軽重が問われる形で,臨床面からも,病理面からも追究が行なわれ,本疾患についての認識が更新された.
肺気腫・気管支喘息・慢性気管支炎は,典型的な病像を示す場合には,臨床診断も容易である.しかし,British bronchitisとAmerican emphysemaの比較研究も行なわれているように,また老人性喘息・四日市喘息などの言葉もあるように,これらの慢性閉塞性気管支肺疾患の鑑別は必ずしも簡単ではない.胸部レ線像からの判断も,正面写真一枚のみでは不確実で,側面写真と深吸気・深呼気時の動的観察も必要である.また肺胞微細構造まで判断するためには,点焦点による拡大レ線像とくに気管支・肺胞造影法の応用が望ましい.肺機能検査も,1秒率の低下のみによる判定でなく,肺気量・換気力学的諸値(気道抵抗,コンプライアンス)・肺内換気不均等性などの傍証があることが望ましい.
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