Japanese
English
特集 肺気腫
慢性肺気腫—綜説
Chronic Pulmonary Emphysema:Introduction
中村 隆
1
Takashi Nakamura
1
1東北大学医学部第1内科学教室
11st Department of Internal Medicine, Tohoku University, School of Medicine
pp.562-565
発行日 1970年7月15日
Published Date 1970/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202160
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気腫という言葉は元来ギリシャ語のemphysanに由来し,"ふくらます"ことを意味するが,肺気腫を1つの病像として始めて把えたのはLaennec (1819年)である1)。氏は肺気腫を"肺の過膨脹状態で,肺組織の萎縮を伴うもの",と述べたが,これは今日考えても誠に卓見といえよう。本症に関する概念はその後幾多の変遷を経て,最近1963年にいたりWHO Technical Report2)で本症に関して次のように述べられている。すなわち,肺気腫という言葉は現在,病理学的にも,臨床的にも,著しく異なった多様の肺の病的状態をさしてい,臨床的,機能的根拠から生前に肺気腫と診断しても,死後解剖してみて肺気腫がないか,あるいは限局していて,肺の残りの大部分が無傷である,というような例は稀でない。一方,生前に,臨床的,生理学的に肺気腫の証明がないにも拘らず,剖検で解剖学的に肺気腫を認めることもある。解剖学的肺気腫——全く多種多様の型で起こりうる——に相関する唯一の特徴的な臨床的,X線学的,または機能的症候というものはない,とし,さらに解剖学的用語による肺気腫の定義を次のように提案している。すなわち,肺気腫は"終末細気管支より末梢の含気区域において,その壁の破壊的変化の為に,その大きさが尋常範囲を越えて増した状態である"と。
この解剖学的用語による肺気腫に今日2つの型が知られている。
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