Japanese
English
主題 Polypeptide
綜説 インシュリンの構造と機能
Structure and Biological Function of Insulin
佐竹 一夫
1
Kazuo Satake
1
1東京都立大学理学部化学教室
1Department of Chemistry, Faculty of Science, Tokyo University Metropolitan
pp.117-125
発行日 1965年6月15日
Published Date 1965/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902623
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I
肝臓が糖代謝に関係の深いことは前世紀末から知られ,その有効成分の抽出精製がいろいろ試みられていたが,血糖降下性ホルモンインシュリンがはじめて結晶化されたのは1926年のことである1)。その後 工業的製法が詳しく検討され2),最近では各種動物から微量のインシュリンを能率よく単離する方法も確立されている3)。なおインシュリンはひろく脊椎動物に分布しているが,魚類てはこの分泌細胞(β細胞)は,膵臓組織とはなれてスタニウス小体として独立している。したがつてこの小器官(カツオで0.5g前後,インシュリン約0.3mgが含まれる)を原料とすると哺乳類膵臓の場合にくらべてはるかに精製がたやすくなる。
インシュリンの平面構造は1955年ウシのものについて最終的に決定され5),(i)分子量約6000,(ii)21個のアミノ酸からなるA鎖と,30個のアミノ酸が結合したB鎖の2本のポリペプチドより構成され6-8),(iii)A,B両鎖間に2個,さらにA鎖内に1個のジスルフィド結合をもつている5)(第1図(a))。したがつて分子量的にみるとタンパク質というよりはむしろポリペプチドであるが,ふつうの条件下では亜鉛イオンによつて錯塩状の二量体を形成し(第1図(b)),この粒子量1.2万の単位がさらに会合し2.4万ないし3.6万の粒子量を示す9-12)。
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