特集 耳鼻咽喉科診療の進歩
最近扁桃の生理綜説
山本 常市
1
1昭和医科大学
pp.734-738
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201247
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Ⅰ.緒言
扁桃の生理に関しては古来幾多の説があげられているが未だ定説はない。その機能は全然ないとも云えるし,又幾分あるとも云えるのである。併し扁挑の組織学的構造が淋巴球の集合体である濾胞よりなつて,淋巴腺と酷似せる点から淋巴腺と同樣に何等か身体防禦の役目をしているのではないかと想像せらるるのであつて,従来一部の人が称えていたように決して伝染の媒介をするものでないことはたしかである。
扁桃が身体を防禦する器管であるという観点から現在迄に1)細菌の浸入に対して身体を防禦する,2)下気道の感染保護,3)淋巴腺と同樣の作用を有する,4)消化機能又は醗酵作用説,5)免疫媒介説,6)血球成生説,7)発育に関する内分泌説等があげられているのであるが就中扁桃の免疫に関する研究が最近,最も多くの人によつて行われているようである。私はこれ等の諸説に関し戦後わが専門領域の雑誌に発表せられた主なる研究を簡単に紹介したいと思うのであるが,文献的考察の関係上これ等に関連せる戦前の2,3の主なる説を取り入れたことを断つておく。
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