巻頭言
肺不全対策の強化を望む
村尾 誠
1
1北海道大学医学部第一内科
pp.635
発行日 1967年8月15日
Published Date 1967/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201797
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肺機能研究の進歩は誠に目覚ましいものがあるが,臨床にもどってみると,機能不全・呼吸困難に悩む患者を前にして,その対策があまりにも旧態依然としていることを強く反省せざるをえない。もともと,肺不全と闘う立場は,有力な強心利尿剤や外科的手段をもって心不全に対処する立場とはやや異なり,むしろ腎不全の対策に苦悩する立場に似ているといえよう。しかし,腎不全に対し腹膜灌流や人工腎臓を駆使して,患者の生命延長に成果をあげた努力にくらべて,呼吸器専門家の肺不全対策への努力は明らかに不足しているのではなかろうか。現在,この方面で積極的役割を果たしているのは麻酔科の人達であって,格段の進歩がみられたのであるが,一方内科領域における関与の程度はまだきわめて低調といわざるをえない。今日のように発展した呼吸機能研究の成果を,肺不全の臨床にもっと強力に応用されるべきである。このような意図が実現するためには,一つの大きな契機が必要であろう。良い例が,麻酔科の新設によって現われている。今日新設される病院にはintensive care unitが設けられる傾向が強いようであるが,声を大きくして,cardio-pulmonary care unitを設けることを提唱したい。また,そこで働く人のチーム作りが最も大切で,その創意工夫によって,重症患者にも応用しうる検査法の確立と人工呼吸法を含む治療法の活用がもっと日常的に行なわれる必要がある。
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